Vol.8 白髪の群生

著作者:YuliiaKa/出典:Freepik

白髪が群生している。

かきあげたら、うわあと声をあげてしまうぐらいの勢いで、陣地が拡大されている。

つい数年前まで、やつらはもっと単独行動をしていて、なんというか、手練れた忍びみたいにひっそりと活動していて、うっかり分け目をかえたら、うわあ、見つかったーというのは、白髪の方であったというのに。

なんだこの野に放たれた外来種のような勢いは。

ミシシッピアカミミガメというか。セイヨウタンポポというか。ヒアリというか。いや、全部、わたし由来の白髪なんだけれどもさ。侵されてしまう、黒が白に塗り替えられてしまう。四大悲劇が始まってしまう。

白髪は、ぬいてはいけない。という説を、本当かどうかは知らないけれども、根拠なく支持している。

ぬいた瞬間に、毛根が刺激されて、隣近所の毛根にも、黒が白になるという呪いスイッチが入るという説である。ありそう。「わたしの無念、あんたたちで晴らすんだよ」「あいわかった」という白髪姉さんと黒かむろたちの会話が聞こえそう。

それで、我が家では、というか、わたしは、白髪は根元すれすれで切る、という方針をとっている。

無論、わたしがわたしの白髪を切るのは限界があるので、子どもたちにしてもらうのだけれども、白髪が忍者であったときは、まだよかった。宝探し的な発見の楽しさも、多少は提供できた(と信じたい)。

それが、外来種襲来になると、すいっとめくればわりと簡単に白髪が発見できるので面白味もなくなり、だからといって、無論、そこらへんをひとつかみして、ばっさり切っていいわけではなく、ちょこまかと生えているのを、白いものだけ一本一本すくいとって根元から切るというのが、時々だるそうにみえる。

だるいという言葉は使いたくなかったけれども、子どもたちも良心があるのか、だるいとは決して言わないけれども、どうみても、「だるい」としか形容しようのない態度で白髪切りにのぞむ時がある。

根元で切ってくれと頼んでいるのに、数センチも残して切る。ので、むしろ切る前までは他の髪と同様におとなしく垂れ下がっていた白髪の一本も、短く切られたせいで、ぴっと起きて立ち上がり、黒い毛をおしのけて表面に出てきたりする。

数ミリとは言わないけれど、せめてもうすこし頑張ってほしい、と食い下がると、あっさりと両隣の黒いのも切られてしまう。あ、黒いのまで切っちゃった、ひゃひゃひゃ、と全然悪びれずに笑うので、もうちょっと真剣にやってほしいとしつこく頼むと、ま、こんなものでしょ、と言いながら、ばさばさと分け目をなじませて、どうも何かをなかったことにしている様子。

わかる。面倒くさいのは、わかる。なので、あまり強くは言えない。

どうしたらいいのか。

金か。

やはり、ここは、一本十円というよくある人参をぶらさげないとだめなのか。

それとも、さっさと白髪染めステージに入るべきなのか。いちいち白髪を切ってしのごうというのが、もはや浅はかなのか。

でも、染めたくないんです。白髪染めをはじめるということは、白髪を染め続けるステージに立つということなんです。それすなわち、白髪染めから逃れられないということじゃないですか。ね、そうですよね。怖いわ、それはそれで怖い。何が怖いって、わたしのような面倒くさがり屋が、そんなことを始めたら、途中で白髪を染めなくなると思うんですよ。あとひと月ぐらいはいいかなとか、帽子でごまかせるかなとかのらりくらりしながら、放置していくと思うんですよ。そうしたら白髪に駆逐された地毛たちが日一日とのびて、気がついたら半分、黒い、もう半分はグレー、つまり全部汚い、みたいになるじゃないですか。ならもう潔く、全部がグレーのがいいんじゃないか、と思ったりもするんです。

でも、まだグレーヘアーになりたくない。グレーが似合うのは、もうちょっと先の人生のはず(と信じたい)。

そんな悩みを、別に言ったつもりはなかったけれども、美容院でなんと金髪を勧められた。いいっすよ、絶対似合いますよ、やりたくなったら即やりましょう。

金髪。それは考えていなかった。でもアリではないだろうか。金髪なら白髪もまぎれるのではないだろうか。髪における金と白は、同じ色と言ってもいいのではないだろうか。

四十越えて、美容院で金髪を勧められるというのは、セレブかヤンキーしかいないような気がしたが、セレブにもヤンキーにもなったことはないので、四十にして新しい扉を開くというのも楽しいかもしれないと思った。

ただ、金髪にしたらしたで、それはそれで金髪にしつづけなければ、今度は、半分、金色(半分グレー)になってしまう。結局解決していない。

やっぱり悩む。

ライター:神 敦子

神敦子#note#
https://note.com/jinatsuko

Vol.8 白髪の群生” に対して1件のコメントがあります。

  1. 代表取締役 宮前朋子 より:

    白髪の群生問題。
    わたしも悩める1人、神さんの葛藤に激しく共感!
    かくいう私は、もう10年くらい前から白髪染めのお世話になっています。
    が、今度は1か月に1回の白髪染めでは間に合わないくらいの浸食スピードに嫌気がさしてきてます。。
    わたしも金髪しちゃおうかなー
    娘には「強そうなママでいいじゃん!」と背中を押してもらってるけど、、、
    神さん、金髪にするときは一緒にしよーー!!

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